賠償しなければならない可能性もありますが、減額されることも考えられます。
まず,被害者に大きな精神的衝撃を与え、その衝撃が長期間に渡り残るような事故態様であり,しかも事故後の補償交渉がうまくいかなかったことから被害者が災害神経症状態に陥ってしまった事件について、平成5年9月9日の最高裁判所の判断によると、災害神経症がうつ病に発展しやすいこと、そしてうつ病からの自殺発生率は,通常の自殺率に比べてはるかに高くなることから,たとえ被害者の自殺による死亡の場合であっても,加害者にその死亡による慰謝料の賠償の責任を認めています。とすると、今回の事件でも、死亡という結果に対しても賠償しなければならないと判断される可能性はあるでしょう。
しかし,交通事故にあった被害者が常に災害神経症やうつ病になるとは限りませんし、災害神経症の人やうつ病の人が全員自殺に至るというわけでもありません。自殺に至ってしまう過程においては、被害者自身の性格等,精神的な要因が無関係ではないことが多いことから,このような場合には、前の質問で説明した素因減額が適用されることが考えられます。実際、前述の最高裁判所の例でも、8割の減額が認められています。